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特集記事

土木・建築分野におけるAI技術と特許2

  • 6月18日
  • 読了時間: 6分

建設業界におけるAI技術の具体的な活用例


 前回は、土木建築業界が抱える人材不足、技術継承、長時間労働などの課題と、AI技術が必要とされる背景について説明しました。

 今回は、建設業界においてAI技術がどのように活用されているのか、具体的な技術例をいくつか紹介します。

 

1.技術継承を支援するAI技術

 建設業界では、社内に蓄積された技術資料、施工基準、過去のノウハウなどを、いかに有効に活用するかが重要な課題となっています。

 そこで注目されているのが、社内文書を検索し、その内容に基づいて生成AIが質問に回答するシステムです。

 従来であれば、社員が社内規程、技術標準、施工マニュアル、過去の事例集などを自分で探し、必要な情報を確認する必要がありました。しかし、このようなシステムを利用すれば、質問を入力するだけで、関連する社内資料を参照しながらAIが回答を作成します。

 これは、熟練技術者や現場責任者が長年の経験によって蓄積してきた知識を、社内で共有しやすくする仕組みといえます。

 技術的な特徴としては、AIが一般的な知識だけに基づいて回答するのではなく、社内文書などの根拠資料を検索し、その内容を踏まえて回答を生成する点にあります。

 したがって、このような技術は、土木建築分野における専門知識や社内ノウハウを、AIを通じて検索・活用しやすくする相談支援システムといえます。

 

2.検査業務を効率化するAI技術

 建設現場では、施工後の検査にも多くの時間と経験が必要です。その一例として、鉄筋同士を接合した部分の出来栄えを、スマートフォンで撮影した画像とAIによって判定する技術があります。

 対象となるものの一つが、ガス圧接継手です。ガス圧接継手とは、鉄筋の端部同士を突き合わせ、加熱しながら圧力を加えて接合する方法です。

 従来は、熟練した作業者が測定器を用いて、継手部分のふくらみの大きさ、ふくらみの長さ、曲がり、ずれなどを目視や手作業で確認していました。

 これに対し、AIを利用した検査技術では、スマートフォンで継手部分を撮影すると、画像認識AIがその形状を解析し、検査基準を満たしているかどうかを判定します。判定結果が不合格である場合には、その理由も表示されます。

 このような技術を用いることで、検査に要する時間を大きく短縮することができます。

 特許や技術的な観点から見ると、重要な点は、単に写真を撮影することではありません。AIが画像中の継手部分を認識し、ふくらみの直径、ふくらみの長さ、折れ曲がりの程度、偏心量などの検査項目を抽出し、あらかじめ定められた基準と照らし合わせて判定する点に特徴があります。

 つまり、熟練者の経験に頼っていた外観検査を、画像認識AIによって支援し、省力化する技術といえます。

 

3.ビル管理に利用されるAI技術

 AI技術は、建設現場だけでなく、完成後の建物管理にも活用されています。

 たとえば、オフィスビルに設置された各種センサーやIoT機器から、室内の温度、照度、人の在席状況、空調設備や照明設備の稼働状況などを収集し、そのデータをAIで分析するビル管理システムがあります。

 このようなシステムでは、収集したデータに基づいて、空調や照明を細かく制御したり、設備の異常や劣化の兆候を早期に把握したりすることができます。

 従来のビル管理では、管理者が設備の状態を確認し、必要に応じて設定を変更することが一般的でした。これに対し、AIを活用したビル管理では、建物内の状況をセンサーによって把握し、AIがその情報を分析して、より快適で省エネルギーな運用を支援します。

 技術的なポイントは、単に空調設備や照明設備を遠隔操作することにあるのではありません。人の位置情報、室内環境に関する情報、設備の稼働データなどを組み合わせて解析し、利用者の快適性を高めるとともに、建物管理の効率化や省エネルギー化を図る点に特徴があります。

 このように、AIを利用したビル管理技術は、建物を単に維持管理するだけでなく、利用者にとって快適で、かつ管理者にとって効率的な建物運用を実現する技術といえます。

 

4.安全管理・危険予知に関するAI技術

 建設現場では、作業員の安全確保が非常に重要です。そのため、危険な作業をロボットに任せたり、事故の予兆をAIで把握したりする技術も開発されています。

 たとえば、鉄骨柱などを溶接する作業では、溶接ロボットを用いて自動的に溶接を行う技術があります。

 鉄骨柱の周囲を溶接する作業には、高温、火花、高所作業、長時間作業といった危険や負担が伴います。溶接ロボットを用いれば、作業員が危険な場所で長時間作業する必要を減らすことができます。

 このような溶接ロボットは、溶接前に溶接対象部分の形状を測定し、その形状に応じて溶接条件を設定します。そして、溶接作業やスラグ除去などを自動で繰り返し行います。これにより、作業の安全性向上と省人化を図ることができます。

 また、AIを用いた危険予知活動の支援システムもあります。

 このシステムでは、現場でこれから行う作業内容を入力すると、AIが過去の災害事例の中から類似する作業や事故を検索します。そして、「転落の危険がある」「挟まれ事故に注意が必要である」「重機との接触リスクがある」といった形で、想定される危険を作業前に把握できるようにします。

 多数の災害事例をAIに解析させることで、人が見落としやすい危険の傾向を抽出し、現場での安全管理に活用することができます。

 このように、ロボットによって危険作業そのものを減らし、AIによって作業前の危険予知を高度化する技術は、建設現場における安全性向上に大きく貢献するものといえます。

 

5.まとめ

 以上のように、建設業界では、AI技術がさまざまな場面で活用され始めています。

 具体的には、社内ノウハウの検索・相談支援、鉄筋継手などの検査業務、オフィスビルの管理、安全管理や危険予知など、活用範囲は広がっています。

 これらの技術に共通するのは、従来は人の経験や判断に大きく依存していた業務を、AIによって支援し、効率化・省人化・高度化しようとしている点です。

 土木建築分野では、今後も人材不足、技術継承、安全管理、生産性向上といった課題に対応するため、AIを活用した新しい技術が増えていくと考えられます。

 そのため、AI技術を利用した建設関連の発明について、特許による保護を検討する場面も、今後さらに増えていくものと思われます。

 

【土木・建築分野でAI技術を活用した製品・サービスを開発している場合には、単なる業務効率化にとどまらず、特許として保護できる技術的特徴が含まれている可能性があります。】

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