特許の業務内容

1.発明とは

 

  発明とは、特許法2条1項に次のように定義されています。「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」

 要するに自然法則を利用して、一定の効果をある確率で再現できるものであれば発明となります。

 自然法則の利用
 

  自然法則の利用といっても、ニュートンの法則とかファラデーの法則といったような典型的な物理法則に限ったものではなく、木

 は水に浮くといった程度の経験則を利用したものでも発明となります。

  効果の再現率は100%である必要はなく、再現率が低くても構いません。例えば、果物の新品種を育種する方法を発明した場合、

 その再現率が小さくても、ある確率で新品種の果物を育種できれば発明となります。

  ただし、自然法則を利用していない純知能的・精神的活動によるものは発明とはなりません。例えば、新しい催眠術のような心理

 学上の法則によるものやスポーツ・ゲームなどのルールといった人為的な取決めは発明とはなりません。

 技術的思想

  技術的思想というからには、自然法則を利用した具体的手段として客観的に特定できるものでなければならず、第三者に伝達可能

 なものである必要があります。そのため、技りょう、技能、秘伝、奥義、カン、コツといったものは技術とはいえず発明とはなりま

 せん。具体的には、料理人の職人芸、楽器の演奏方法、イチロー選手の振り子打法や大谷翔平選手のスライダーの投球術などは発明

 になりません。

 

  高度のもの

  発明の定義には「高度のもの」とありますが、これは簡易な技術を保護対象とする実用新案法の考案と区別するために定義された

 ものにすぎないので、それまでに世の中に存在していなかった高度な技術を利用したものでなければならないということではありま

 せん。特許出願される発明は既に存在している発明の一部を改良したようなものがほとんどであり、まったく新しい開拓的な発明と

 いうものは稀であるといえます。

  例えば、小学生が夏休みの課題として創作した、磁石を利用したアルミ缶とスチール缶を分別するゴミ箱の発明について特許権を

 取得して話題になりましたが、これも立派な発明といえます。

 発明の種類

  発明には、物の発明の他にも使用方法や生産方法といった方法の発明もあります。また、ソフトウェアや通信ネットワークなどを

 利用したビジネスモデルについても発明となり得ます。

  そのため、ご自身でこれは発明であると考えて創作したものであれば、弊所にご相談してください。そのまま特許出願できる場合

 もあれば、多少の改造をすれば特許出願できるものもあります。また、アイデアはあるが、未だ発明の構成が具体的でないような場

 合であっても、ご相談していただければ、具体化できるようなお手伝いをすることもできますので、そのような場合にも、ご遠慮せ

 ずにお問合せしてください。

2.特許権とは

 

 独占排他権

 

  特許権とは、特許権者が一定期間、発明を独占的に実施し、かつ、第三者の実施を排除することができるという非常に強力な権利

 です。これを独占排他権といいます。

​  特許権取得のメリット

 この独占排他権である特許権を取得すること及びその過程を通じて得られるメリットとして次のようなものが考えられます。

 ① 市場から競合他社を排除するという典型的な法的効果が期待できます。

 ② 他社へのライセンスによる自社技術の利用拡大やOEMによる市場の拡大を図ることが期待できます。

 ③ 開発製品の他社への横流しの防止や価格決定権を握って取引者間における主導権を確保することが期待できます。

 ④ 出願に至る過程において、アイデアや経験など見えない状態の無形資産を文章や図表等の形として明確に見える化することが期待

  できます。

 ⑤ 属人的な技術や技能を個人のものとせず会社の財産とすることが期待できます。

 ⑥ 先進性や独自性といった自社の技術力を提示して顧客を安心させて信頼関係の強化を図ることが期待できます。

 ⑦ 特許の優位性や収益性が評価されることにより無担保で金融機関から知財融資を受けることが期待できます。

 ⑧ 技術開発の成果を知的財産の形で明確に示す仕組みを作ることで技術開発が活発化することが期待できます。

 ⑨ オリジナリティや技術課題を克服する力があることをアピールして事業の受注に結び付けることが期待できます。

 ⑩ 知的財産を核として大学、大企業、競合他社などとの共同事業に発展させることが期待できます。

 ⑪ 競合他社からの侵害警告・侵害訴訟に対する防御手段として機能することが期待できます。

 ⑫ 自社技術の本質的な強みを明確にし、それを展開させることにより技術開発型企業へ脱却することが期待できます。

 ⑬ 従来技術との比較により自己が開発した技術を客観的に捉えることが可能となり、技術力の向上が期待できます。

 ⑭ 技術開発の過程で先行調査を行い、自社技術と融合可能な他社技術を積極的に発見し活用することが期待できます。

 ⑮ 事前に自社の強み及び市場や競合他社の開発動向を把握して効率的な技術開発投資を期待することができます。

 ⑯ 後発企業による低価格の模倣品を市場から排除して高い利益率を確保することが期待できます。

 ⑰ 強い特許で差別化することよりメディアに注目されて知名度が向上し優秀な人材を確保することが期待できます。

 

 特許権を取得していないデメリット

  一方、特許権を取得していない場合には、上述したメリットが得られないばかりではなく、場合によっては以下のような経験をす

 ることが予想されます。

 ●自社開発した発明を実施していたある日、同様の発明を遅れて開発した同業他社から、特許権侵害の警告をされたり、訴えられた

  りして、せっかく多額の投資をして開発した発明が使えなくなる。

 ●長年苦労して開発した新技術について、他社に製造・販売させるべく営業したところ、「今は製造する気はないです」と断られ

  た。後日、その会社に同様の技術について先に特許を取得されてしまった。

 ●斬新な製品や工法についてのアイデアを思いついたので、取引関係にある大企業や大手ゼネコンにこれを提案し、実用化に向けた

  共同研究を実施し、完成させたところ、相手方からこの製品等を単独で特許出願をしたいとの要請があり、力関係からその要請に

  応じざるを得なくなった。

 ●発注先や元請から工期の短縮やコスト低減といった技術的課題を解決するためにいくつかの提案をして欲しいとの要請があり、試

  行錯誤して開発した改良製品や改良工法を提供した後、それらの技術について発注先や元請に特許権を取得されてしまった。

  このように、自社で開発した技術やデザインを他社に開示する状況となった場合には、あらかじめ特許権や意匠権などの知的財産

 を取得しておくか、少なくとも出願してから技術内容を開示するか、または、技術の核となる部分は詳細には開示せずに概要を示す

 だけにとどめたり、どうしても技術の全容を開示する必要が生じた場合には、秘密保持契約を交わした後に開示するといったよう

 に、自社が不利益を被らないために特許権などの知的財産権の取得や知的財産契約の締結などが重要になってくるものと考えられま

 す。

3.特許出願に必要な書類

 

  発明について特許権を取得するためには、特許法や関連省令で定められている出願書類に発明等の内容を記載して、特許庁に出願

 する必要があります。

 出願書類には以下のものがあります。

 ⒧ 願書

   ●特許の付与を請求する意思表示を明確にするための書面です。

   ●出願人や発明者の氏名や住所等を記載します。

 ⑵ 特許請求の範囲

   ●特許権として保護を求める範囲を特定するために必要な事項を記載する書面です。

   ●ここに記載された内容に基づいて特許権の範囲が確定されることになります。

   ●技術的に関連のある複数の発明を記載することができます。上位概念から下位概念に向けて階層的に複数の発明を記載するの

    が一般的です。

 ⑶ 明細書

   ●発明の内容を詳しく説明するものであり、特許請求の範囲の用語の意義の解釈として、あるいは新技術を公開する技術文献と

    して機能する書面です。

   ●具体的には、「発明の名称」、「図面の簡単な説明」、「発明の詳細な説明」を記載します。

 ⑷ 必要な図面

   ●明細書の理解を補助するため、発明の具体的構成を図示した書面です。ただし、必須の書面ではなく、方法の発明などで図示

    できないような場合には、提出する必要はありません。

 ⑸ 要約書

   ●発明の概要などを記載した書面です。

   ●公開公報等に掲載することにより技術情報へのアクセスを容易にすることを目的としています。そのため技術情報としてのみ

    用いられ、権利範囲の解釈に用いられることはありません。

4.特許出願の審査の概要

 

  産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)についての監督官庁は経済産業省の外局である特許庁ですので、特許庁に特

 許出願をし、出願審査請求をしますと、特許庁の審査官が特許法等の法令に基づいて特許出願の審査をすることになります。

  この審査に合格しますと特許査定という行政処分がなされ、所定の期間内に所定の特許料を納付しますと特許権を取得することが

 できます。

 以下に、特許出願についての主な審査手続のご説明と審査フローを示します。

 ⒧ 出願審査請求

   ●出願審査請求とは、出願とは別に、一定期間内に出願審査の請求手続をしたものについてのみ実体審査をする制度です。こ

    れにより防衛のみを目的とする出願や出願後に権利化を望まなくなった出願など、審査請求のない出願については審査を行う

    必要がなくなるため、審査対象が減少することとなり、審査の迅速化が図られることになります。

   ●一旦、出願審査請求をするとその請求を取り下げることはできず、また、特許出願日から3年以内に審査請求をしないと、原則

    として、特許出願が取下げられることになります。

   ●なお、出願審査請求は、他の産業財産権にはない特許出願の審査に特有の制度です。

 ⑵ 方式審査

   ●特許庁に対して特許出願をすると、出願審査請求の有無に関係なく、すべての出願について、必要な出願書類が添付されてい

    るか、書類が適正に記載されているかといった形式的・書誌的な審査が行われます。この審査が方式審査となります。

   ●この方式審査において瑕疵がない場合には、出願審査請求を待って実体審査が行われます。一方、瑕疵がある場合には、補正

    命令等がなされ、その補正等をすることで瑕疵が解消されると出願は維持され、瑕疵が解消されない場合には、出願が却下さ

    れることとなります。

 ⑶ 実体審査と拒絶理由

   ●出願審査請求がされると特許出願についての実体審査が行われます。

   ●この実体審査では、特許出願が特許法で定められている拒絶理由に該当するか否か、すなわち、特許要件を満たしているか否

    かについての審査が行われます。主な特許要件として以下のものがあります。

     ① 出願の対象が発明であるか否か(発明性)

     ② 出願した発明が公知となっている発明と同じであるか否か(新規性)

     ③ 出願した発明が公知となっている発明から容易にできたものであるか否か(進歩性)

     ④ 出願書類が法定されている内容で適正に記載されているか否か(記載要件)

     ⑤ 出願人が発明について出願する権利を有しているか否か(主体的要件)

   この他にも特許要件が限定列挙されており、特許権を取得するためにはすべての特許要件を満たす必要があります(すなわち拒

  絶理由に一つも該当しないことが権利取得の条件となります)。

 ⑷ 出願公開

   ●出願公開とは、原則として、特許出願の日から1年6ヶ月経過後に、審査請求の有無および審査段階のいかんに関わらず、特許

    庁に係属するすべての特許出願についてその内容を一般に公表する制度です。

   ●これは、出願内容の先行技術としての利用を促進させると同時に、重複研究、重複投資、重複出願などの弊害を防止すること

    を目的とした制度です。

   ●一方、出願公開されるということは、自社の開発した技術内容が(競合)他社に知られることをも意味しているため、経営戦

    略を策定されたうえで、その戦略に基づいて、公開して独占権を取得する技術と、公開せずにノウハウとして秘密管理する技

    術を見極めることが重要になってくるものと思われます。

 ⑸ 拒絶理由通知

   ●拒絶理由通知とは、審査官や審判官が特許出願について審査・審理した結果、拒絶の理由を発見した場合に、最終結論として

    の拒絶査定または審決に先立って行う、当該理由の出願人への通知のことです。

   ●特許出願の審査・審理において審査官等の判断に瑕疵が生ずる可能性を否定することができないため、拒絶理由を発見した場

    合に直ちに拒絶査定をするのではなく、あらかじめ出願人に対して拒絶理由を通知し、弁明の機会を与えたうえで、最終判断

    を下すこととしています。

   ●拒絶理由通知には、「審査の結果、登録すべきではないと判断した旨」および「登録すべきでないと判断した理由(拒絶理

    由)」が記載されています。この拒絶理由としては、「特許法第○○条第○項の規定に反する」というような拒絶の根拠条項

    と、その条項に反すると判断した理由が記載されます。また、先行技術の存在を根拠として拒絶理由とする場合には、その先

    行技術が記載されている引用文献等が示されます。

 ⑹ 拒絶理由通知への対応

   ●拒絶理由通知がなされた際の出願人の対応としては、まず、拒絶理由の妥当性を検討した上で、意見書を提出して審査官の過

    誤を指摘したり、出願書類の補正をして拒絶理由を解消するといった対応が一般的です。

   ●補正をした場合、補正後の内容が出願日まで遡及するという効果があるため、これを無制限に認めると、その遡及効果により

    第三者に不測の不利益を与える場合があり、また、審査のやり直しが必要となって、審査が遅延する原因ともなるため、法律

    において補正が内容的・時期的に制限されています。

 ⑺ 特許査定と拒絶査定

   ●特許出願の査定とは、審査官のなす行政処分であって、特許出願の実体審査の最終結論をいいます。この査定には、拒絶理由

    のないときにされる「特許査定」と、拒絶理由があるときにされる「拒絶査定」とがあります。

   ●審査官による審査結果は出願人の利益や第三者の産業活動と大きく関係しているため、その内容を明確にし、その後の手続を

    迅速に行って双方の利益を保護する必要があります。そのため、審査において一定の結論に達したときは、行政処分として査

    定を行い、出願について特許すべきか否かの判断結果を明確にすることとしています。

   ●査定は、理由が記載された文書で行われ、査定の謄本が出願人に送達されることになります。

   ●なお、拒絶査定がなされたときは、所定の期間内に不服審判を請求して争うことも可能です。

 ⑻ 特許料の納付と特許権の発生

   ●原則として、特許査定の謄本の送達日から30日以内に所定の特許料を納付することによって特許権の設定登録を受けることが

    でき、それによって特許権が発生します。

   ●特許権の設定登録は、特許庁長官による職権でもって特許庁に備える特許原簿に登録されることを意味します。

   ●特許権の設定登録があった後は、出願書類の内容が特許公報に掲載されます。また、特許権者には、特許証が交付されます。

   ●なお、特許料を納付しないときは出願が却下されますので注意する必要がございます。

 ⑼ 特許権の存続期間

   ●特許権は、設定登録日を始期とし、原則として、特許出願日の翌日から起算して20年が経過した日を終期として、その間が存

    続期間となります。

   ●なお、審査が長期化したことにより設定登録日が遅延した場合には、法定の要件を満たすことを条件として、存続期間が延長

    される場合があります。

特許庁

出願人

 特許出願

方式審査開始

出願から3年以内

手続不備の場合は補正命令等

出願審査請求

実体審査開始

出願から1年6月

 出願公開

 拒絶理由

あり

なし

通知内容検討

拒絶理由通知

意見書/補正

 拒絶理由

解消

未解消

任意手続

不服審判請求

 拒絶査定

特許査定謄本

 特許査定

30日以内

 特許料納付

 設定登録

 特許権発生

  特許証

出願から20年間存続

​ 特許公報

出願審査請求から審査結果の最初の通知(主に特許査定または拒絶理由通知書)が出願人へ発送されるまでの期間の年平

  均は9.3ヶ月(2018年実績―「特許行政年次報告書2019年版」より)

出願審査請求から特許権の発生まで平均14.1ヶ月(2018年実績―「特許行政年次報告書2019年版」より)

5.特許権の効力

 

 特許権の法的効 

 ⒧ 特許権の効力とは、特許権者が特許発明を業として実施する権利を専有するという特許権の内容をいいます。この効力は、特許発

   明の実施を独占する支配的効力と、他人の業としての実施を排除する排他的効力を併せ持っています。

   具体的には、特許権の侵害に対して特許権者には民事的な救済措置が与えられ、侵害者には刑事罰が適用されることを意味しま

  す。

 ⑵ 民事的な救済措置

  民事的な救済措置として以下のものがあります。

  ① 差止請求

   ●特許権者は、特許権が侵害され又は侵害するおそれがある場合には、侵害の停止又は予防を請求することができます。

   ●また、迅速な救済措置として仮処分を申請することもできます。

  ② 損害賠償請求

   ●故意又は過失によって特許権を侵害した者に対して、侵害よって生じた損害を賠償してもらうために請求することができま

    す。

  ③ 不当利得返還請求

   ●特許権者は、正義公平の観念に従って、特許発明を無断で実施してそれにより利得を得ている者に対して、その利得を限度と

    して返還を請求することができます。

  ④ 信用回復措置請求

   ●特許権者は、故意又は過失により特許権等を侵害したことにより、自己の業務上の信用を害した者がある場合には、裁判所に

    対し、自己の業務上の信用を回復するのに必要な措置を命ずるよう請求することができます。例えば、新聞紙上への謝罪広告

    等が考えられます。

 ⑶ 刑事罰の適用

  ●特許権を侵害すると刑事罰の適用対象となり、10年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金又はこれらの併科となります。

  ●法人が侵害した場合には、さらに3億円以下の罰金刑が科されることとなります。

 特許権の効力制限

  法の究極目的とする公益保護の見地から、あるいは第三者の実施を確保するため等の産業政策上の見地から、特許権者による特許

 発明の独占的な実施が制限される場合があります。例えば、試験または研究のために発明を実施する場合や特許出願前から発明を実

 施していた場合などです。