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特集記事

土木・建築分野におけるAI技術と特許4

  • 6月16日
  • 読了時間: 4分

特許を取得したAI技術の紹介1~構造物の劣化診断におけるAI画像認識技術

特許番号:第7323694号

発明の名称:構造物の劣化状態診断方法

特許権者:株式会社奥村組


 土木建築分野では、橋梁、トンネル、ダム、建築物などの老朽化が大きな課題となっています。

 これらの構造物では、ひび割れ、腐食、漏水、剥離、鉄筋露出などの劣化状態を早期に把握し、適切な補修・補強につなげることが重要です。

 

 従来、このような点検作業は、点検員が現地で目視確認を行ったり、撮影画像を確認したりする方法が中心でした。

 しかし、構造物は規模が大きく、点検対象となる範囲も広いため、劣化箇所の確認には多くの時間と労力がかかります。また、画像を用いてAIにより劣化状態を検出する場合でも、画像が高精細であるほどデータ量が大きくなり、解析に時間がかかるという課題があります。

 

 この発明は、構造物を撮像して得られた超高画素画像と、これを低画素化した画像とを使い分けながら、AIにより構造物の劣化状態を診断する方法に関するものです。

 

 まず、ドローンなどにより橋梁等の構造物を撮影し、1億ピクセル以上の超高画素画像を取得します。超高画素画像は、細かなひび割れや剥離などを確認するうえで有用ですが、そのまま全体をAI解析すると処理負荷が大きくなります。

 

 そこで、この発明では、取得した超高画素画像をいったん低画素化し、低画素化した画像を用いて、構造物の部位や種別をAIにより特定します。

 たとえば、橋梁であれば、主桁、胸壁、床版、橋脚など、構造物のどの部分であるかをAIが識別します。この部位特定には、セマンティックセグメンテーションなどの画像認識技術を用いることが想定されています。

 

 次に、AIにより特定された部位について、元の超高画素画像から該当部分を抽出し、その部位ごとの高精細画像を、学習済み劣化検出用画像認識モデルに入力します。

 この学習済みモデルは、ひび割れ、腐食、防食機能の劣化、漏水・遊離石灰、剥離・鉄筋露出などの損傷状態を検出するためのモデルです。畳み込みニューラルネットワークを用いたディープラーニングにより、部位ごとの損傷状態を出力することができます。

 

 この発明の重要なポイントは、単に「AIで劣化を検出する」というだけではありません。

 低画素画像を使って構造物の部位を特定し、その後、特定された部位ごとに超高画素画像を使って損傷を検出する、という二段階の処理を行っている点に特徴があります。これにより、超高画素画像全体を一度に解析する場合と比べて、処理時間を短縮しつつ、細かな損傷も検出しやすくなります。

 

 さらに、この発明では、誤検出確認ステップも設けられています。

 これは、AIが検出した損傷状態が、その部位や種別において本当に起こり得るものかを確認する処理です。たとえば、鋼製部材に対して「コンクリートのひび割れ」や「鉄筋露出」といった、その部位には通常起こり得ない損傷が検出された場合には、誤検出として除外することができます。

 

 このように、本発明は、AIによる画像認識技術を構造物の劣化診断に応用した例といえます。

 特に、画像の解像度を使い分けること、AIにより部位を特定したうえで部位別に損傷を検出すること、さらに部位ごとの性質に基づいて誤検出を抑制することにより、効率的で精度の高い劣化診断を実現しようとしています。

 

 土木建築分野におけるAI関連発明では、単に「AIで画像を解析する」と記載するだけではなく、どの画像を入力し、AIが何を特定し、その結果をどのように次の処理に利用するのかを具体的に示すことが重要です。

 この構造物の劣化状態診断方法は、ドローン撮影画像、画像低画素化、AIによる部位特定、学習済みモデルによる損傷検出、誤検出確認という一連の処理を組み合わせることで、土木建築分野におけるAI技術の活用例を示すものといえます。

診断システムの構成
診断システムの構成
診断システムのブロック
診断システムのブロック
劣化診断処理のフローチャート
劣化診断処理のフローチャート
低画素化した構造物の画像の所定の部位   所定の部位の損傷状態の例示
低画素化した構造物の画像の所定の部位   所定の部位の損傷状態の例示

出典:特許公報2023-16803


【土木・建築分野でAI技術を活用した製品・サービスを開発している場合には、単なる業務効率化にとどまらず、特許として保護できる技術的特徴が含まれている可能性があります。】

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