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土木・建築分野におけるAI技術と特許1
土木建築業界の現状と直面する課題 1.はじめに 近年、AI技術は急速に発展しており、日常生活だけでなく、製造業、医療、金融、物流など、さまざまな産業分野で活用が進んでいます。 知的財産の分野においても、AIを利用した技術について特許出願が行われ、実際に特許権として保護される事例が増えています。 土木建築分野も例外ではありません。建設現場、設計業務、インフラ点検、維持管理などの場面において、AIを活用する技術が注目されています。 そこで本コラムでは、土木建築分野におけるAI技術と特許について、全7回に分けて説明します。1~3回では、業界が抱える課題及びAI技術の活用例やメリットについて紹介し、4、5回では、実際に特許を取得したAI技術について図面を提示しながら紹介し、6,7回では、進歩性の観点からAI関連発明で特許を取得する際の留意点について紹介いたします。 まず今回は、土木建築業界が置かれている現状や課題を整理し、なぜこの分野でAI技術の活用が重要になっているのかを説明します。そのうえで、今後のコラムでは、AIを用いた具体的な技術例や、
土木・建築分野におけるAI技術と特許2
建設業界におけるAI技術の具体的な活用例 前回は、土木建築業界が抱える人材不足、技術継承、長時間労働などの課題と、AI技術が必要とされる背景について説明しました。 今回は、建設業界においてAI技術がどのように活用されているのか、具体的な技術例をいくつか紹介します。 1.技術継承を支援するAI技術 建設業界では、社内に蓄積された技術資料、施工基準、過去のノウハウなどを、いかに有効に活用するかが重要な課題となっています。 そこで注目されているのが、社内文書を検索し、その内容に基づいて生成AIが質問に回答するシステムです。 従来であれば、社員が社内規程、技術標準、施工マニュアル、過去の事例集などを自分で探し、必要な情報を確認する必要がありました。しかし、このようなシステムを利用すれば、質問を入力するだけで、関連する社内資料を参照しながらAIが回答を作成します。 これは、熟練技術者や現場責任者が長年の経験によって蓄積してきた知識を、社内で共有しやすくする仕組みといえます。 技術的な特徴としては、AIが一般的な知識だけに基づいて回答するの
土木・建築分野におけるAI技術と特許3
建設業界でAI技術を活用する主なメリット 前回は、建設業界におけるAI技術の具体的な活用例について説明しました。 今回は、建設業界でAI技術を導入することにより、どのような効果が期待できるのかについて、主なメリットを整理して説明します。 1.生産性の向上と業務の効率化 AIを導入する大きなメリットの一つは、業務の効率化です。 建設業界では、図面の確認、数量の拾い出し、積算、工程表の作成、報告書の作成など、時間を要する作業が数多くあります。これらの中には、一定のルールに基づいて繰り返し行われる作業も多く含まれています。 このような定型的な作業をAIに任せることができれば、技術者は、設計上の判断、施工上の工夫、関係者との調整など、人間の経験や判断が求められる業務により多くの時間を使うことができます。 また、AIは人と異なり、夜間や休日でも処理を継続できるため、短時間で大量のデータを処理することができます。たとえば、過去の施工データや資材データを分析し、適切な工法や資材調達の方法を提案することも可能になります。 その結果、作業時間の短


土木・建築分野におけるAI技術と特許4
特許を取得したAI技術の紹介1~構造物の劣化診断におけるAI画像認識技術 特許番号:第7323694号 発明の名称:構造物の劣化状態診断方法 特許権者:株式会社奥村組 土木建築分野では、橋梁、トンネル、ダム、建築物などの老朽化が大きな課題となっています。 これらの構造物では、ひび割れ、腐食、漏水、剥離、鉄筋露出などの劣化状態を早期に把握し、適切な補修・補強につなげることが重要です。 従来、このような点検作業は、点検員が現地で目視確認を行ったり、撮影画像を確認したりする方法が中心でした。 しかし、構造物は規模が大きく、点検対象となる範囲も広いため、劣化箇所の確認には多くの時間と労力がかかります。また、画像を用いてAIにより劣化状態を検出する場合でも、画像が高精細であるほどデータ量が大きくなり、解析に時間がかかるという課題があります。 この発明は、構造物を撮像して得られた超高画素画像と、これを低画素化した画像とを使い分けながら、AIにより構造物の劣化状態を診断する方法に関するものです。 まず、ドローンなどにより橋梁等の構造物を


土木・建築分野におけるAI技術と特許5
特許を取得したAI技術の紹介2 ~トンネル掘削工事におけるAIを活用した危険箇所予測技術 特許番号:第7798694号 発明の名称:トンネル掘削管理システム 特許権者:株式会社フジタ 土木建築分野では、現場の安全性を高めるために、AI技術を活用した発明が増えています。 その一例として、トンネル掘削工事において、切羽やトンネル側面の状態を解析し、崩落などの危険箇所を予測する「トンネル掘削管理システム」があります。 トンネル掘削工事では、切羽面の変位、肌落ち、湧水、地山の硬さの変化などを早期に把握することが重要です。従来は、これらの危険性を経験豊富な施工者が目視や経験に基づいて判断する場面が多く、判断の精度が施工者の経験に左右されるという課題がありました。 この発明では、トンネル内に設けた複数のセンサからデータを取得します。 具体的には、3Dスキャナにより切羽やトンネル側面の三次元形状データを取得し、サーモグラフィカメラにより切羽の温度分布画像データを取得します。また、騒音計によりトンネル内の音を取得し、湧水量計により湧水量のデータ


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AI関連発明で特許を取得する際の留意点1 ~仮想事例で考える「AIを内蔵した装置の発明」~進歩性の有無 1.はじめに 特許を取得するには、まず発明として成立していなければなりません。その上で新規性、進歩性、記載要件などをクリアする必要があります。このことはAI技術であっても同じです。ただし、AIについては通常の特許要件に加えて特に留意しなければならない事項があります。 今回は、仮想事例に基づいてその留意事項を中心にご説明します。なお、以下では土木・建築分野のAIに関する留意事項について記載していますが、ここに記載した事項は他の分野においても共通するため、他分野の方にも参考になるものと考えています。 2.仮想事例 発明の名称「構造物の画像からひび割れの状況を自動判定する装置」 例えば、点検員が撮影した構造物の画像からひび割れの有無や程度を判定させる装置について考えます。 単に、点検員が撮影画像を見てひび割れを判断していた作業を、AIに画像を入力してひび割れの有無を判定させるというだけでは、進歩性が弱い可能性があります。...


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AI関連発明で特許を取得する際の留意点2 ~仮想事例で考える「構造物の劣化診断画像の輝度調節に用いられる学習済みモデルの学習方法」 発明の名称「構造物の劣化診断画像の輝度調節に用いられる学習済みモデルの学習方法」 たとえば、橋梁、トンネル、道路、建物の外壁などをカメラやドローンで撮影し、その画像からコンクリートのひび割れや劣化箇所を診断する場合を考えます。 撮影画像は、日差し、影、照明、撮影角度などの影響により、明るすぎたり暗すぎたりすることがあります。その結果、ひび割れや劣化箇所が見えにくくなることがあります。 そこで、AIを用いて、撮影画像を診断しやすい明るさに自動調整することが考えられます。 このとき、単にAIで画像を明るくするだけでなく、ひび割れ部分が白飛びや黒つぶれによって見えにくくならないように、AIの学習方法に工夫を加えることがポイントです。 たとえば、ひび割れや劣化箇所が見えにくくなるような画像調整を、AIの学習上「大きな失敗」として重く評価するようにすれば、AIはそのような調整を避ける方向に学習し















